人生で一度だけ、テストでカンニングをしたことがある。塾の特待生試験での話だ。 大学受験のために通っていた学習塾には特待生制度があって、試験で一定以上のスコアを取った生徒は一年間の授業料が免除された。その代わり国立大学、早慶上智、東京理科大等の指定校をいくつか受験し、「●●大学合格者○名!」という、あのよく見る広告の数字を稼いでくることを義務付けられる。それは当時高校生のわたしの目には、フェアな取引に映った。試験は高校二年生から三年生になる年の春休みを挟んで週末ごと実施され、合格するまで何回も受けることができる。科目は英語・国語・数学の3教科。基準点や得点は発表されず、合格者の名前だけが週明け廊下に貼り出された。試験の結果如何によって入塾を決める生徒もいたし、わたしはもともと高校一年生のときからその塾に通っていたので、家計を助けられるなら助けたい、くらいの気持ちで受験していた。「中高と私立に