「青べか」が浦安の代名詞になったのは、山本周五郎が昭和3年頃の浦安に住む人達との交流を短編にし、それを「青べか物語」として小説にして発表(昭和35年)されて、翌々年、映画化(東京映画:昭和37年6月封切)されてからだろう。 小説では、浦安は浦粕(うらかす)、行徳(ぎょうとく)は徳行、高梨さんは高品などに変えられ、町の習慣や人々の交流が、物書きの観察力で見極められ、人情味豊かな暖かい心で描かれている。 「繁あね」「芦の中に一夜」「留めさんと女」は、元気印の好きな短編だ。 映画は、川島雄三:監督、脚本:新藤兼人、先生:森繁久弥、芳爺(よしじい):東野英治郎、わに久:加藤武、五郎ちゃん:フランキー堺などが演じている。 強烈な個性をスクリーン狭しと、観客にぷんぷん臭わせていた芳爺は、浦安の町が持っている個性、風俗・習慣、人との絆を集約した象徴的な存在のように思う。 小説は、先生と芳爺との出会いから