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ブックマーク / doshin.hatenablog.jp (9)

  • 『蘆江怪談集』平山蘆江(ウェッジ文庫)★★★★☆ - たむ読書日記

    何よりも文章のたたずまいがよくて読んでいて心地よいです。 「妖怪七首〜序にかへて」 「お岩伊右衛門」★★★★☆ お岩が守銭奴で、夫を顧みず金を貯めることに精を出します。まあ浮気した伊右衛門も悪いんですが、『東海道四谷怪談』によって伊右衛門=悪人というのを擦り込まれているだけに、お岩の方にちょっとでも非があるとそれだけで「ああ、お岩も悪いんじゃん」みたいな感想を持ってしまいました。飽くまでわたしの感想であって、蘆江の筆はそのような価値観を持ち込んではいませんが。 「空家さがし」★★★☆☆ 借家に入った新居人が、立て続けに幽霊を見て……。 「怪談青眉毛」★★★★☆ 知り合いに幽霊画を頼んで百物語を開催しようと計画していたが……。怪異は百物語の外にあるという異色作。 「二十六夜待」★★★☆☆ ――流れ着いた心中者の死体。これも何かの縁と弔ってやったのだが――後日、何かを探している船がどこにも行け

    『蘆江怪談集』平山蘆江(ウェッジ文庫)★★★★☆ - たむ読書日記
  • 『Hamlet, prince de Danemark』Alexandre Dumas, Paul Meurice(1848) - たむ読書日記

    『ハムレット デンマークの王子』シェイクスピア戯曲の仏訳、韻文。 アンドレ・モーロワ『アレクサンドル・デュマ』のなかに、「これは、デュマが脚色した、おかしな「ハムレット」だった。彼はこの芝居をハッピー・エンドにするために、シェクスピアのように、デンマークの王子を死なせはしなかった。」(P.201)と書かれてあったので、面白そうだと思い読んでみました。 実際には「ハッピー・エンド」とはいっても、ハムレットが死なないというだけで、おおよその流れは原作通りでした。 そのほか原作との違いというと、大幅なカットがあったり、登場人物の整理があったりする点です。 特に目立ったのは、冒頭の亡霊登場シーンがまるまるカットされ、原作の第二場に当たる宮廷シーンから始まっているところです。亡霊については、ホレイシオがハムレットに話して聞かせる場面でまとめて説明されています。そうされてみると、確かに原作は二度手間と

    『Hamlet, prince de Danemark』Alexandre Dumas, Paul Meurice(1848) - たむ読書日記
    kanimaster
    kanimaster 2010/08/02
    デュマ訳ハムレット。
  • 『たいした問題じゃないが―イギリス・コラム傑作選―』行方昭夫編訳(岩波文庫)★★★★☆ - たむ読書日記

    イギリスの新聞コラムニスト四人の作品からいくつか選んだもの。『くまのプーさん』のA・A・ミルンもその一人。 解説では「天声人語」の名前が挙げられているけれど、おかしな話題・ユーモア・論理展開など、どちらかといえばチェスタトンに近いと感じました。というか、チェスタトン自身も新聞コラムの執筆者だったわけだし。さすがに書の作品はチェスタトンほど晦渋じゃないけれど。う〜む、だけどチェスタトンのあの不思議な筆運びは、一部なりともコラムの作法だったのか。 四人のなかではガードナーとミルンが面白い。どちらかというとガードナーは社会派ネタ、ミルンは身のまわりネタ。むりやりへんなことを書いている感じでかわいい。リンドの作品は長めの分、普通のエッセイぽい部分があって切れ味に劣ります。ルーカスは語りに工夫を凝らしすぎかな。 二〇世紀初頭のイギリスにガードナー、ルーカス、リンド、ミルンの四人を代表とするエッセイ

    『たいした問題じゃないが―イギリス・コラム傑作選―』行方昭夫編訳(岩波文庫)★★★★☆ - たむ読書日記
    kanimaster
    kanimaster 2010/06/05
    これは気になっている。
  • 『鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇』東雅夫編(ちくま文庫)★★★★☆ - たむ読書日記

    泉鏡花が参加した百物語怪談会を中心に編んだアンソロジーです。個人的にはこれまでの特別篇のなかではいちばん楽しめました。 第一部には、喜多村禄郎が体験した、カバーイラストにもなっている怪談が、「怪談精霊祭」「恋物語(抄)」「浮舟」三者三様に収録されています。 「怪談精霊祭」は怪談会の様子を綴った新聞記事。怖がらせようというのではなく事実を簡潔に記しただけの、江戸怪談のような作品です。「しんみり」と悲恋を語った喜多村に答えて、「実に好い話しですね」とただただ怪談として評価する鏡花先生がキュートです(^_^。 「恋物語(抄)」は、上記喜多村の体験を、また別の企画で。これを読むと怪談でも何でもなく、ただの世間話みたいです。仮に実際はこんな出来事だったのだとすると、これを怪談に仕立て上げた話者のテクニックが光りますね。 「浮舟」は、上記喜多村の怪談にヒントを得て泉鏡花が書いた小説です。でもどちらかと

    『鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇』東雅夫編(ちくま文庫)★★★★☆ - たむ読書日記
    kanimaster
    kanimaster 2010/03/07
    里見とんの話の中で、死んだのは妹じゃなくて娘だったと思います。
  • 『昨日のように遠い日 少女少年小説選』柴田元幸編(文藝春秋)★★★★★ - たむ読書日記

    読む前は勘違いしていたけれど、「児童文学」ではなく「少女少年小説」なのですね。 「大洋」バリー・ユアグロー/柴田元幸訳(Ocean,Barry Yourgrau,2009)★★★★★ ――私の弟が大洋を発見する。夕の席で、弟はそのことを報告する。「素敵じゃないの」と母は言う。「さ、それべてしまいなさい」「お腹空いてない」「そんなことは訊いておらん。出されたものはたいらげてもらおうじゃないか」と父が言う。 ぽっかり空いた胸の内のように寂しく大洋が広がっていました。弟の部屋からしか見えない海を目にしていながら、軽蔑と嫌悪しか感じなかった語り手と父親。対照的に「わかっていたのよ」と言う母親の言葉には嘘偽りのないものがありました。 「ホルボーン亭」アルトゥーロ・ヴィヴァンテ/西田英恵訳(The Holborn,Arturo Vivante)★★★★☆ ――あんなレストランは後にも先にも見たこと

    『昨日のように遠い日 少女少年小説選』柴田元幸編(文藝春秋)★★★★★ - たむ読書日記
  • 『時間都市』J・G・バラード/宇野利泰訳(創元SF文庫)★★★★☆ - たむ読書日記

    『Billenium』J.G. Ballard,1962年。 「至福一兆」(Billenium)★★★★☆ ――ウォードの部屋は四・五平方メートルあり、法規で定められた広さから〇・五平方メートル超過していた。こんな広い部屋が見つかるとは運がいい。人口は一年間で百万人ふえる計算で、居住スペース配分の規則がまた縮小されるという噂だ。 相対的に描かれた満足と不満。シチュエーションだけがSF的発想に極限まで推し進められながら、描かれている普遍的な現況。あきれるほどに寓話っぽい内容なのに、説教くささのかけらもなく、ひたすらかっこいい。 「狂気の人たち」(The Insane Ones)★★★★☆ ――精神自由法はなんびとにたいしても狂気になることの自由を付与していた。これには隠された狙いがあって、〈潜在意識〉へのテクニックが放恣にながれるのを規制するところに趣旨があった。精神科学全般にわたって組織的

    『時間都市』J・G・バラード/宇野利泰訳(創元SF文庫)★★★★☆ - たむ読書日記
  • 『S-Fマガジン』2009年05月号No.637【バリントン・J・ベイリー追悼特集/トマス・M・ディッシュ追悼特集】 - たむ読書日記

    「My Favorite SF(第41回)」森奈津子 今月号はグイン・サーガ特集でもあるので、グイン・サーガ好きを公言していた作家に原稿を依頼した、ということでしょうか。 「邪悪の種子」バリントン・J・ベイリー/中村融訳(The Seed of Evil,Barrington J. Baley,1973)★★★★☆ ――果てしなき時間。情緒的感情というものが欠けているので、エーテルヌスはおのれを創りだした者たちを憎むことさえできなかった……。二十二世紀初頭、太陽系にあらわれた系外からの訪問者は、驚愕や衝撃とは無縁のまま迎えられた。訪問者についてすでに判明した事実がひとつある。彼は百万歳だった。地球上でいちばん似ているのはゾウガメだろう。 ベイリーは「四色問題」しか読んだことがありませんでした。あれは理解不能だけど面白い、という意味では円城塔やスラデックみたいな作品でしたが、誌掲載作はわり

    『S-Fマガジン』2009年05月号No.637【バリントン・J・ベイリー追悼特集/トマス・M・ディッシュ追悼特集】 - たむ読書日記
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    kanimaster 2009/04/02
    「蟹は試してみなきゃいけない」 バリントン・J・ベイリー
  • 『百年小説』(ポプラ社)★★★★☆ - たむ読書日記

    同じポプラ社の『諸国物語』の国内版。海外版と比べると、ちょっと微妙なラインナップである。名訳シリーズとは違って、ネット上で読めるものもたくさんあるしなあ。というわけで、所有しているものは手持ちのものを、ネットで読めるものはネットで読んでみました。(結果的にいくつかが未読のままに。。。) 「杯」森鴎外 ★★★☆☆ ――滝への途中に清冽な泉が湧き出ている。温泉宿の方から賑やかに話しながら近づいて来る。女の子に違ない。「早く飲みましょう」「そうそう。飲みに来たのだったわ」手ん手に懐を捜って杯を取り出した。この時背後から第八の娘が現れた。 冒頭の泉がわき出る描写が目に浮かぶようで美しい作品です。はっきりいって森鴎外の小説は、ストーリーだけなら「ベタ」といっていいような作品が多い。黒い(?)杯を「熔巌の冷めたような」と表現したり、西洋人の肌を「琥珀のような顔」と表現したり、独特の色彩が鮮やかです。(

    『百年小説』(ポプラ社)★★★★☆ - たむ読書日記
    kanimaster
    kanimaster 2009/03/29
    島崎藤村 『伸び支度』 の感想。「びっくりするくらい平凡なたとえ、びっくりするくらい安直な成長譚……。」
  • 『名短篇、さらにあり』北村薫・宮部みゆき編(ちくま文庫)★★★★★ - たむ読書日記

    姉妹編『ここにあり』がいまいちだったのであんまり期待していなかったのだけれど、こちらは好みに合う作品が多かった。もともと好きな作家はともかく、名前すら知らなかった著者の作品が当たりだったのは、アンソロジーを読んでいてとても得した気分になれます。解説対談で宮部氏が(たぶんわざと)深読みし過ぎたりとんちんかんなことを言ったりして、それを北村「先生」がそれとなく軌道修正するやり取りも、読者に親切だし面白い。 「華燭」舟橋聖一 ★★☆☆☆ ――只今、御指名に預かりました日熊でありますが、夕は名だたる朝野の名士が、ずらりと並んでおいでになる真ン中で、私のような末輩者が立上って何かお話を致すということは、まことに僭越きわまることと……。 オヤジのスピーチ(といってもまだ若いんだろうけど)のくどさつまんなさを皮肉っている以上、作品のギャグやユーモア自体もオヤジ臭いものになってしまうのは致し方のないこと

    『名短篇、さらにあり』北村薫・宮部みゆき編(ちくま文庫)★★★★★ - たむ読書日記
    kanimaster
    kanimaster 2008/12/07
    藤村の短編だけでも読んでみたい。
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