あのとき永瀬が角換わりで右桂速攻を見せたのに対し斎藤は早繰り銀にして仕掛けを誘い、居玉のまま超急戦となっていたが、まさか同じ展開に。しかし藤井は手堅く守りの手を選んだ。ほっとして眠りにつく。新大阪で乗り換えの際、再びモバイル中継の画面を開くと、なんと藤井が右玉にしている! 王座戦第2局に臨む永瀬拓矢王座(右)と挑戦者の藤井聡太竜王・名人 ©時事通信社 藤井の右玉は、中盤の組み換えや雁木からの流れで見ることはあるが、角換わり後手番でダイレクトに右玉にしたのは初めてだ。とはいえ、いつかは採用するだろうなと私は思っていた。7月3日の佐々木大地七段との第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局では、佐々木の右玉に対して端に桂を跳ね、玉頭から攻めるという衝撃的な構想を見せた。私は副立会だったので、藤井に話を聞いたのだが「相手の玉が左辺に戻りにくい配置のときのみ端桂は成立していると思います」と答えた。