『折口信夫全集』第36巻(中央公論新社、2001年)に収録されている「年譜」の「昭和二十一年(一九四六) 六十歳」の箇所に次のようにある。 十月二十日、民間伝承の会主催、柳田国男古希祝賀会(二子玉川の宝亭)の余興で自作の「ほくろ(フォクロア)漫才」を今野円輔・牧田茂に演じさせる。(123頁) この漫才の脚本は『折口信夫全集ノート編』第6巻(中央公論社、1972年)に「黒子万歳」として収録されている。底本は『芸能』第11巻第1号(1969年)に掲載されているもの。『芸能』に掲載されている方には、末尾で牧田茂の解説が加えられている。 終戦後間もない昭和二十一年十月二十日、東京・二子玉川の宝亭を会場に、民間伝承の会関東地方会員懇親大会という名目で、柳田国男先生の古希の祝いが行われた。そういう名目にでもしないと、先生が受けられなかつたからである。「黒子漫才」はその日の余興にしようと折口信夫先生が書