この夏、日本絵画の作品に触れる機会が二度ほどあった。一つ目は上野の博物館で開催されていた「伊藤若仲と江戸絵画展」と、もう一つは、京都に旅行に行った際に見た、南禅寺の屏風絵である。そのふたつについて、リンクできる部分を書きたい。 http://f.hatena.ne.jp/jakuchu/20060616102156 □ 江戸絵画のふたつの逆説的手法 □ 「背景を描かないままにしておくことで逆説的に奥行きを想像させる」という手法は、雪舟が日本風にアレンジしたときの水墨画の構図が影響したものだろうか。それが江戸時代に至るまで継承されているかのように思える。たとえば人物や動物が単体または少数で主題になって描かれている掛け軸などは、すべからく背景に「空」が用意されている。それは一方で主題としての対象の平面性にも関与する。 伊藤若仲が描く動物も、例に漏れず平面的だ。レイヤーごとに色彩の濃淡がない、と