それにもかかわらず、こちらのほうは倒産したり、カネ儲けだといって軽蔑されたりする。なぜだろうか。帰りの電車の中でいろいろ考えた末、はっと気がついた。 「それは商売に使命感がないからや。宗教には人間を救うという大きな使命感がある。それや、それなんやと思った。いまのままではいくら熱心に経営を行っていても、力強い行動は行われない。 それでは商売をするものの使命はなにか。貧をなくすこと、世の中を豊かにすること、貧をなくして人びとを救うことや。この世から貧をなくすことがわしらの使命なんや。そこで悟ったんやな、わしなりに。そしてこれがわしの経営を進める基本の考え方になった。そういうことがあって、わしは自分の事業を一段と力強く進めることができるようになったんや」 悩み考え続けなければ、悟ることもできない おそらくそれまで悩み、考え続けていたことによって、いくつかの断片的な考え方が松下の頭の中にできあがっ