昨年末、知人の女性から「助けてほしい」と電話があった。生保のセールスを生業としている彼女に付きまとう客がいて困っているらしい。知人のピンチ。助けなければ人ではない。「他を当たってよ」即座に断った。ストーカーが怖いというのもあるけれど、その女性が、一応知人とはいえ、先々月退職した年長の元同僚の元奥さんという、いってみれば他人だからだ。そんな薄い関係は、僕が凶悪なストーカーと戦う理由にならない。 もうひとつ理由があった。ブラックな食品関係で働く僕は仕事納めが12月31日なのでストーカーと鬼ごっこをしている暇などないのだ。「悪いけど」って話を終えると女性は「課長が悪いのよ」と聞き捨てならないことをいう。僕が悪い?心当たりが多すぎてわからない。「私たちが離婚したのは課長と毎晩飲み歩いていたのも原因なんですよ。少しでも良心の呵責があるなら手助けしてくださいよ。方法は考えてありますから」と女性は言った