LGBTなど性的少数者をめぐっては、賛否両論あるなかで理解増進法が成立したものの、推進派と慎重派の間で建設的議論が行われた結果とは言い難い。また、両者とも、自らの価値観を声高に主張するだけで、議論がかみ合っていないように見受けられる。LGBTに対する配慮にかける発言がある一方で、推進派はやみくもに慎重派の主張を「差別だ」と糾弾するため、自由な議論ができないという現実もあろう。 青山学院大教授の福井義高氏実は、推進派が範とする欧米でも、事情は変わらない。ここでは、今後の実りある議論を期待して、LGBTのTすなわちトランスジェンダーに焦点をあて、LGBT推進の時代精神に沿わない研究を無視、感情的に批判する風潮のなかで取り上げられることの少ない実証研究や、欧米での新しい動向を紹介したい。 「LGB」と「T」は別の問題まず初めに注意すべきは、LGBTと一括して語られることが通例となっているけれども