物語の相似や古形を見つけると、保存したくなる性癖がある。ただし今回のものは、読んで楽しいものじゃないです。 京都府宮津市の古刹成相寺〔なりあいじ〕の梵鐘に、こんな物語が伝わっている。 つかずの鐘 京都府の民話 <福娘童話集 きょうの百物語> 長い話ではないので、正確なところはリンク先を読んでもらった方がいいが、ざっとあらすじを紹介すると、次のような感じだ。 * * * 戦乱で毀損されてしまった成相寺の梵鐘を再鋳するために、村人から寄進を募ることになった。だが村はずれに住む両親と赤子の三人家族は、あまりにも貧しくて一文の銭も出すことができなかった。寄付を集めにきた寺男がそれをなじると、女房は「そんなに言うなら私たちの命より大事なこの赤ん坊を持って行ってもらうしかありません」と答えた。 鐘の鋳造は難行し、三度まで再鋳造を行うはめになった。その三回目の鋳造の折、貧しい夫婦