3月10日より、市谷の杜 本と活字館で「100年くらい前の本づくり」展が始まった。縁あって監修という大役を務めることになったのだが、実のところこれは、製本や紙についてのベテランの先生方の知見と、博物館の展示チームの行き届いた企画に頼って少しだけお手伝いをしたということである。 特に、製本と修復の専門家、岡本幸治氏による『改正西国立志編』『仏蘭西法律書』の解体調査に立ち会えたことは大きかった。氏の豊かな経験談をうかがいながら眼前で開示されていく当時の書物の内部を、私のなけなしの知識と照らし合わせていくことで、当時の製本と書物をめぐる視界が次々に開けていくのは快感ですらあった。そこで、今回の解体調査でわかったにもかかわらず、初心者向けの展示解説では触れえなかった点について、コラムを書いてみたいと思う。 背貼りのヤレ紙と製本時期 かがりの洋式製本は、本文用紙をかがった上に背に紙を貼って補強する。