白鳳時代の仏像の最高傑作といわれる奈良・新薬師寺の香薬師像。昭和18年に3度目の盗難に遭い、行方不明になっていたが、このほどその一部である「右手」が昨年発見され、新薬師寺に返還された。 仏像の右手にたどり着いたのは、元新聞記者で、20年以上香薬師像の取材を続けている貴田正子氏。新薬師寺住職の全面的な協力を得て地道な調査取材をするうち、昭和18年の盗難時に本体と右手がバラバラになり、実は右手だけが盗まれていなかったこと、その右手も行方不明になっていることが判明する。本体とは別に右手探しを本格始動すると、彫刻家や美術史家らの証言が得られ、ついに右手の所在を突き止める。そして無事、新薬師寺への返還が行われた。行方不明であることさえ知られていなかった文化財を探し当て、元の寺に戻すという「前例のない文化財発見のニュース」だ。 東京芸術大学名誉教授で、日本彫刻史研究の権威である水野敬三郎氏も、この右手