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文芸と社会に関するkash06のブックマーク (4)

  • 新コロナウイルス対策失業団戦記 - 関内関外日記

    その晩の夕のメニューは、いつもどおりのすいとんともやしの和え物だった。すいとんといっても、味のない、ぬるい塩スープに白いかたまりが浮かんでいるだけだ。 事の号令を待っていると、そこへ監視官が入ってきた。汚れてベージュ色になったマスクの紐を右側だけ外し、副首相スタイルでがなり始めた。 「今夜は、明日の迎撃戦をひかえた大切な夜である。ここ横浜は首都防衛の最後の盾だ! そこで、農林水産上級副大臣閣下より、ありがたいお気持ちを頂戴した! これを糧に、明日の戦闘に打ち勝てる!」 すると、薄汚れた白衣の給仕班が入ってきて、ソーシャル・ディスタンスを守っているぼくたちのプレートに、肉のかけらとメロンを置いていった。 「事、開始!」 ぼくたちはそれぞれの、ぼろぼろのマスクを外して、事を始めた。原則、会話は禁止されていたが、一人の男がつぶやいた。 「おれ、ステーキ・チェーンで働いていたからわかるんだ

    新コロナウイルス対策失業団戦記 - 関内関外日記
  • 犯罪者には田中が多い - 犯罪者には田中が多い(柞刈湯葉) - カクヨム

    「田中はやめたほうがいいです」 編集のO田川氏は開口一番にそう言った。都内某所の喫茶店で「魔法少女探偵アガサちゃん」の次話ネームを見せていた時だった。 「月刊少年ボウイ」のO田川氏はもう5年も僕の漫画を担当していて、それなりの信頼関係ができている。社交辞令的な褒め言葉は省いて単刀直入に打ち合わせを進めよう、というのが暗黙の了解だ。最近はネームを見せる前からO田川氏が不満を言いそうな点が予想できてしまうので、何を言われても大したダメージはない。だが、今回は一瞬コメントの意味がわからなかった。 「は? 田中?」 「この容疑者の女性、ホラ、田中久美恵さんって書いてるですか。名前、変えたほうがいいです」 「……ああ、それですね」 「魔法少女探偵アガサちゃん」は、コミカルな女子中学生が魔法で事件を解決するミステリ漫画。今回は温泉回だ。露天風呂で宿泊客の遺体が発見され、警察は火山ガスによる事故だと判断

    犯罪者には田中が多い - 犯罪者には田中が多い(柞刈湯葉) - カクヨム
  • 旅立ちの朝 - 肉芽観察記

    財布だけ持って 街を歩いている 日差しによって 暑くも寒くも 曖昧に感じられる どうも 意識がはっきりとしない 朝 穴蔵から出てきて もうあそこには戻らない 視界は広く曖昧だが 少し柔らかな色を 足元に落としている もう旅立とう、 どこへ行くとも考えずに ただ 穴に戻るのに嫌気が差して 風船のように プカプカと漂う

    旅立ちの朝 - 肉芽観察記
    kash06
    kash06 2019/11/02
    剥き出しの自然界に個として生きられない人類は、人の暮らす空間として街を作った。都市生活の延長で世界を覆ってしまった人類は、街の中に、人の住処と個の漂う荒野を重ね持つようになった。
  • 花は軌道に消える

    (※この話は史実を参考にしたフィクションです) 戦後七十年以上が過ぎ、従軍経験のあった人々の殆どが鬼籍に入ってしまった。 従軍した当時の大人ではなく、我々が戦争の惨禍の中で、流され、苦しむしか無かった子どもたちにヒアリングの対象者を移したのもそういった理由による。 駅の子、街の子と言われ、都市部を彷徨った戦災孤児たちも現在、多くが八十代を迎えている。 彼らが戦争を知る時代の最後の証言者である。 我々が戦災孤児だった人々から当時のヒアリングをしている、ということを知り、連絡してきた中に以外な人物がいた。 池脇源太郎。かつて、関東一円を拠点とした池脇組の組長だった人物である。暴対法のあおりを受け、十五年ほど前に組は解散しているが、現在において、裏社会との関わりが完全に切れているかは不明である。 池脇組はバブル期には地上げ屋として知られていた。池脇は名言はしなかったが、証言の中で語られるブンちゃ

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