前衛美術から民俗学へ至った写真家。副田一穂評 「坂田稔-『造型写真』の行方」展1930年代から名古屋を拠点として活躍した写真家・坂田稔は、当時の前衛写真運動を牽引し、独自の写真論を展開した。30年代末からは民俗学へと至り、「常民」の生活を取材。常設企画展として開催された本展は、これまで知られることのなかった前衛のその後の活動を、遺されたプリントとネガからたどるもの。愛知県美術館学芸員の副田一穂が論じる。 文=副田一穂 写真がオブジェをつくる 写真家・坂田稔(1902〜74)の額装されたオリジナルプリント37点が、一列に整然と並んでいる。続いて、残されたガラス乾板やネガフィルムから美術館が本展のために新たに起こしたインクジェットプリント55点が、シリーズごとに組写真として展示されている。 大阪の新聞社に勤めながら「浪華写真倶楽部」で撮影や現像、プリントの技術を磨いた坂田が、故郷の名古屋でカメ