1956年生まれ。テレビディレクター、映画監督、作家。ドキュメンタリー映画『A』『A2』で大きな評価を受ける。著書に『東京番外地』など多数。 森達也 リアル共同幻想論 テレビディレクター、映画監督、作家として活躍中の森達也氏による社会派コラム。社会問題から時事テーマまで、独自の視点で鋭く斬る! バックナンバー一覧 事件や事故は必ず風化する 大きな事件や事故があってしばらくが過ぎた頃、風化させてはならないとのフレーズをよく耳にする。気持ちはよくわかる。でもそれは無理だ。あらゆることは風化する。それは当たり前のこと。ものは壊れるし人は死ぬ。事件や事故の直後には決して消えないと思われた悲しみや怒りは、年月の経過とともに薄くなる。人はそのようにできている。 もしも忘却という機能がなければ、人は正常な意識状態を保てなくなるはずだ。悲嘆や苦痛、屈辱や憎悪などがいつまでも乾かないままに堆積し続けるならば