ミステリの歴史を見ると、多くの「バッシング」が見られる。とくに昭和30年代にはハードボイルドに対する風当たりが強かったようで、(正確にはハードボイルドではないものの)大藪春彦へのバッシングには手厳しいものが多かった。九鬼紫郎の著した『探偵小説百科』には、事典でありながらスピレーンや河野典生の項には、罵倒に近い説明が書かれている。こうしたものが、商業誌を含めて広く流布していた。だから、「新本格」だけが、歴史上とくに激しいバッシングを受けたわけではない。新しいジャンルが登場するときは、多かれ少なかれ、まずたたかれる。しかし、一見マニア受けするような作風に見える「新本格」ミステリに、わたしを含めた昔からのミステリマニアが「バッシング」をしたのは、そういった「新しいもの」への拒否反応だけだったとは思えない。 「新本格」と呼ばれた作品を、当時のミステリマニアはどう評価したのだろう。もちろん「当時のミ
『十角館の殺人』の新装改訂版文庫に、綾辻行人が「新本格バッシング」について書いているらしいことを、Webサイト「ミステリっぽい本とプログレっぽい音樂」 http://blog.taipeimonochrome.ddo.jp/wp/markyu/index.php?p=1403 で知った。で、確認したら、たしかに当時のことを書いている。 それによると、「すでに活動を休止した某探偵小説愛好会の一部メンバー」がバッシングの急先鋒であり、彼らはその年の新人たちを会報の「斬る!」と称した座談会報告で、片っ端からこき下ろしていたという。 なるほど。 もちろん、この「すでに活動を休止した某探偵小説愛好会」とは、わたしも所属していた「怪の会」であり、会報とは「地下室」のことである。その年の新人の作品を評する「五賞を斬る!」は毎年の恒例行事であり、いまも形を変えて継続している。ここ数年の内容はここで読める。
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く