なんという僥倖だろう。この人の新作をこんなにも早く目にすることができるなんて。しかも、今回の作品もこんなにも個性的で、こんなにも心地よいものであるなんて。 ご存知でない方のためにまず説明しておこう。著者の川添愛は、『白と黒のとびら』『精霊の箱』というふたつの作品で熱狂的なファンを生み出した言語学者である。ふたつの作品は、「オートマトンと形式言語」「チューリングマシン」をそれぞれテーマとしていて、それらの基礎を学べる内容となっている。 驚くべきはそのスタイルだ。どちらも、「魔術師に弟子入りした少年が苦難を乗り越えながら成長していく冒険物語」という形をとっているのである。読者は、主人公とともに遺跡を探索し、土人形を討伐しながら、形式言語やチューリングマシンについての理解を深めていく。いうなれば、RPG感覚で学べる入門書。そんな本がはたしてほかにあっただろうか。 さて、そして今回の本『働きたくな
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