話を聞いた人:須崎文代(建築史家) 「住宅は住むための機械である」という名言を残した近代建築の巨匠、ル・コルビュジエは「台所は神殿とはいわないまでも、家の中で最も重要な場所の一つだ。台所も居間も人が生活する場所であるから」とも著した。「名だたる建築家が設計した住宅は、作品として意匠や構成が注目されがちですが、キッチン空間もこだわりの結晶です」と建築史家の須崎文代さんはいう。 産業革命以降、手作業を機械装置に置き換える機械化の波がキッチンにも及ぶ。「同時に、効率よく仕事ができるように炊事の順序と設備の配置の仕方を見直し、調理、収納、道具類を体系的に整理することが20世紀初頭に学者たちによって提唱されました」と須崎さん。これを受けて建築家たちは、戸建住宅や集合住宅を通じて実践。「キッチンの近代化は、モダニズム建築が目指した合理性や機能美と合致して発展したのです」 〈メカニカル・ウィング〉バック