ダイちゃんが拠点にしている離れ屋には、少し前まできちんと管理をする人がいて、 その飼い猫が住んでいた。 急な用事ができたのか、その人は予定より早く違う世界に旅立っていった。 猫はしばらく留まって、十ヶ月が経った頃、その人を追って同じところへ行ってしまった。 離れ屋にある猫玄関は、その猫が使っていたものだ。 先住猫がいるときから、ダイちゃんはその玄関を通って家の中に入っていた。 そうして、ごはんを分けてもらっていた。 人間からごはんをもらうようになっても、ダイちゃんは「にゃあ」が言えなかった。 ノラ生まれノラ育ち。 猫社会の中では「にゃあ」というコトバは必要ないからだ。 『のどゴロゴロ』もできなかった。 ごはんをくれる人間に「しゃあっ」と威嚇の息を吐き 少し機嫌のよいときは、グーグーという音を立てた。 今は「にゃあ」も言えるし、のどを鳴らすこともできる。 ダイちゃんはとてもおしゃべりで、少し