著者の夫、服部文祥(ぶんしょう)さんは、できるだけ装備を持たずに、食料や燃料を現地で調達しながら長く山旅を続ける、サバイバル登山家である。その世界で彼を知らない人は、もはや皆無であろう。 彼の生き方は野性的だ。一見、本能の赴くまま振る舞っているようで、行動すべてにバランス感覚を重視している。物事を深く考え、教養もあり、生き物すべてに造詣(ぞうけい)が深い。ブレのない生き方、圧倒的な文章力には、男女問わずファンが多い。 文祥さんの言動は、現代の食問題や社会問題の原点を突いている、と私は長年思っている。そして、どの書籍からもふと垣間見える決してストレートではない家族への愛情表現が、文祥さんの人間味を増し、なんとなく憎めない。そんな彼との暮らしを赤裸々につづった書籍を、妻の服部小雪さんが発売するとあり、話題にならないわけがないと思った。 小雪さんは美大でワンダーフォーゲル部に所属した経験を持つ、