【第1部 破産前後】 平穏な日常の破綻は突然訪れる。 人生とは、概ねこんなものである。 幸せな気分は、それほど続かない。そんなことは、はなから承知していたのだが。 8月1日…。 のんびりとした一日となるはずだったこの日、1本の電話によって、わたしのもくろみは、もろくも崩れ去った…。 この日、わたしが心惹かれている女性と都心のホテルのラウンジでカレーバイキングを楽しみ、食後のコーヒーに酔いしれていたのは午後の早い時間であった。 オフィスに戻った後、某新聞社の親しくしている部長が転勤の挨拶に訪れた。関係会社への異動である。彼は後任の随分と若い部長を伴っていた。 お互いが笑顔を交わしあって別れた直後に、ケータイが鳴った。 やはり親しくつきあっている別の新聞社の経済部記者Tさんからだった。 「ウオッチマンがヤクザとトラブル起こしているって知ってるか」と云う。「第三者からの破産申し立ても名古屋地裁に