動画アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する中国人起業家は、IT業界で最も危うい「溝」を渡るにあたって周到な準備を整えた。政府の厳しい管理下に置かれた中国のインターネットは、この溝によって世界とは切り離された状態にある。 この起業家は、アプリの利用者が中国共産党の検閲の対象にならないよう、ティックトックを中国で利用できないようにした。利用者のデータはバージニア州とシンガポールに保管した。幹部にはアメリカ人を起用し、アメリカ議会で自社の利益を守るべくワシントンではロビイストを雇った。 しかし結局のところ、このような対策はどれも意味をなさなかった。ティックトックはアメリカのトランプ大統領からの激しい圧力にさらされ、マイクロソフトに事業を売却する交渉を進めている。トランプ氏はマイクロソフトのティックトック買収にゴーサインを出した。米中の対立が深まる中、両国を隔てる「デジタルの壁」はこれ