近現代音楽の嚆矢と目され、いまだに鮮烈な輝きを失わないストラヴィンスキーのバレエ音楽《春の祭典》。この傑作の構造を作曲家の川島素晴氏が分析します。 文・川島素晴(作曲家) リズム法の革命 従来の西洋音楽は、強拍と弱拍の交代で4拍子が形成されるように、循環的なリズムを前提としていました。ムソルグスキーが《展覧会の絵》の冒頭で示した5+6拍子や、チャイコフスキーが《アンダンテ・カンタービレ》で示した拍子の交代は、西洋音楽の伝統でいうなら革命的だったわけですが、彼らはそれを、実に素朴な「うた」として導入しています。ロシアから、リトアニアなどの東欧寄りの旧ソ連に属していた地域では、そのような循環的なリズムを持たない旋律も多く歌われており、自国の音楽に取材した要素を取り入れる国民楽派の系譜に自然に連なるものとして、これらの変拍子の導入はなされました(日本人としては、「あんたがたどこさ」を思い出すと、