小中学校の元教員に聞いて驚いたことがある。親子の絆(きずな)を強めようと、学校で弁当を持 ち寄って食事会を開いた。そこでビールを飲む親がいたという。 「学校は聖域だから控えていただきたい」と求めたが、「なぜいけないのか」と抵抗、反発したそ うだ。運動会でもパラソルを立ててビールを飲む親がいるという。こういう人を説得するのは意外と 難しい。常識が通用しないからだ。 学校行事や大勢の子どもたちの前でお酒を飲まないのは大人として当然の嗜(たしな)みではない か。「今では“親の教育”が必要だ」と元教員は嘆いた。 もう一つ気になることがある。文化庁の二〇〇八年度国語世論調査の結果だ。「互いの考えを言葉 に表して伝え合うこと」を重視する人が減り、「互いに察し合って心を通わせること」を大切に思う 人が増えた。 意思疎通は「言葉より気持ちで」だろう。以心伝心ともいう。だが、「察し合い」重視が言語力の 衰退