アジア・太平洋戦争終戦から65年が経ち、戦争体験者亡き後の平和をわれわれ若い世代がどう構築していくか本格的に取り組まなければならない時代が近づいている。そのような中、戦後生まれ、いわゆる「戦無派」世代の日本近現代史研究者で一橋大学教授の吉田裕氏がまとめ上げた本書は、全5章を使ってアジア・太平洋戦争開戦前夜から終戦までを対米戦線の経過を中心にして政府、軍部、宮中、アメリカ、植民地、前線の日本兵、一般市民といった多様な視点から詳細に描きだし、一次資料に基づいた戦争のリアルな実態と今も残る戦後処理の諸課題をわたしたちに明確に示してくれる。またはじめに述べられている「本来ならば戦後処理の前提となるべきはずの戦争責任」、「戦争や戦場の現実に対するリアルな想像力の回復」という2つの問題意識は全体を通して強く感じられる。ここでは各章のハイライトを紹介し、最後にこの2つの問題意識に立ちかえってみることとし