古典が2冊、復刊された(シェリングは初訳)。『紛争の戦略』は1960年、『個人主義と経済秩序』は1948年の本だが、内容はまったく古くなっていない。経済学に古典とよべる本は少ないが、この2冊は、少なくとも経済学部の学生は絶対に読むべき本である。 シェリングの本は冷戦を「協調ゲーム」ととらえ、核戦争を回避する「よい均衡」に到達する情報戦略を考えるものだ。こうした「均衡選択」の戦略は合理的には導けず、当事者の心理が重要だ。これはゲーム理論の最良の入門書であると同時に、今なお新しい問題を提起している。 ハイエクの本については、今さら解説するまでもないが、帯に「インターネットはここから始まった!」と書いてあるように、若い読者が読んでも新鮮だろう。版元のPR誌に私も推薦文を書いたが、ハイエクの本を1冊だけ読むなら、本書をおすすめする(アマゾンのタイトル表示がおかしいので、直したほうがいい)。