『化学史研究』第27巻(2000): 223-230 © 2000 by the Japanese Society for the History of Chemistry. All rights reserved. 伊藤憲二 筆者はもともと東京大学大学院博士課程において科学史家として訓練をうけていたが、1996年9月にフルブライト奨学生としてハーバード大学の科学史学部にPh.D取得を目的として入学した。以後、現在(2000年9月)まで4年にわたって同大学に在籍してきたことになる。本稿では筆者の体験をもとにハーバード大学における大学院生の訓練について記し、読者の参考に供したい。またここでは科学史に焦点を絞り、ハーバードにおける大学院生及び留学生の生活などの点については別の機会に譲ることにする。 筆者は日本における量子力学の研究の歴史を専門としている。そこでよく聞かれる質問(時にはそ