『社会生物学論争史 ―― 誰もが真理を擁護していた』 2 ウリカ・セーゲルストローレ 垂水雄二 みすず書房 P647 まず、進化生物学そのものの性質――本書で扱われた諸問題の根源的な原因――の検証から話を始めよう。進化生物学は、かなり特殊なタイプの科学分野である。一方でそれは、すべての科学と同じように、世界についての客観的な知識を拡大しようと試みている。もう一方では、それはまさしく人類の起源にかかわる問題を扱ってもいる。進化生物学は、既存の他の創造神話や人類の自己認識と競合するものだと主張する。この性格は、それを他のあらゆる分科と同じようにたんなる科学とみなすことをむずかしくする。進化生物学に、暗黙の道徳的機能をも与えることは避けがたいように思われる。もう一つの疑問は、進化生物学者自身がこのことを問題として認識しているかどうかである。そして、もしそうなら、彼らはいかにして、それに対処するの