言葉に力なんて宿ってない。期待もしていない。 迷いがなかったことは、一度もない。 高校生の時、小論文の授業で自分の過去を振り返ることがあった。今まで世間についてきた嘘がバレていくようで嫌だった。つらいし、痛いし、みっともない。文章を書くとはそういうことだ。 じゃあ、なぜ私は書くのだろう? 少し前まで「誰かのために」とか「救いになれば」と思っていた。 文字に力なんてないと思いながらも、実際私はいくつかの文章を読んでは、涙を流し、心を打たれた。だから、自分もいつかそういうものを作ってみたいと願った。 社会に生きているのだから、せめて誰かの役に立ちたい。そうでなければ、価値がないと思っていたからだ。 でも、この考えが大きく揺らいだ。 きっかけは、ある音楽家だ。彼は静かに、軽やかに、ふふっと笑ってみせた。 「何かを作る時、誰かを救おうと思うのは……傲慢でしょう? 病的だよ。恥だと思う」 白い日差し