『人はひとりで死ぬ 「無縁社会」を生きるために』 「無縁社会」。NHKのドキュメンタリー番組のタイトルから派生した言葉が、昨年の新語・流行語大賞トップテンに入った。孤独死など、人と人とのつながりが希薄になりつつある現代を批判的に言い表したフレーズだ。昭和30年代ブームに代表されるような、「有縁社会」であった昭和の日本社会を懐かしむ風潮ともよく合致している。 だが、宗教学者の著者は、この流行に首をかしげる。そもそも無縁社会とは、相互束縛でがんじがらめになった農村の「有縁社会」に対し、日本人自身が都市化と自由を望んだ結果ではなかったか。それは社会の変化による必然であり、嘆くのは不毛である。この先多くの人が一人で死ぬという現実は受け入れるしかなく、そこから思考を始めなければという達観したリアリズムが、本書の基調となる。 興味深いのは巻末だ。著者は「あやうく無縁死になりそうになった経験がある」と、