今回の「憲法の言葉シリーズ」は、「憲法にない言葉」である。最近話題の「自衛権」。これは、「個別的」であれ「集団的」であれ、憲法のどこを探しても出てこない言葉である。もともと、「自衛権」というのは国際法上の概念であって憲法上のものではないから、憲法に「自衛権」という言葉がないのは、おかしなことではない。ただ、国際法上の問題が憲法解釈に影響を及ぼすということはあり得るから、憲法には書かれていない「自衛権」という言葉が憲法解釈の問題として議論の対象になることも、まったくあり得ない話だというわけではない(もちろん、内閣が憲法解釈を変えていいのかという問題は、まったく別の話である)。だが、その際には、「自衛権」という概念が元来国際法上のものである以上、その国際法的な沿革や意味をきちんと理解したうえで議論する必要がある。 国際法上、自衛権とは、国家または国民に対して急迫不正の現実の侵害があった場合にや