歯医者で、目をガーゼで覆われて口を開けたまま治療を待っていると、歯科医のおじさん先生が、 「今夜デート？」 と尋ね、隣の歯科助手の女性が 「えっ？ いいえ」 と答えていた。 「そうじゃなくて、今日この後外へ食事に行く予定ありますか？」 「違いますけど」 あんまりしつこく聞いているので、「セクハラしてる暇があったら早く治療してよ」って思ってたら、俺の肘をつんつん突いて 「あなた、今夜デートですか？」 最初から俺に対しての質問だった。デートだったら麻酔しない方がいいかもねって意味だった。 紛らわしい。最後は一瞬、とうとう俺を誘い始めたのかと思った。

夜寝る前、弁当のご飯用に炊飯器のタイマーをセットしておいたんだけど、朝起きて見てみると、炊飯器のフタが開けっ放しになっていて、米は中途半端にごわごわに炊けてて食べれたもんじゃなかった。 その状態の炊飯器を見て状況を把握して、とっさに 「くそっ、いったい誰がこんなことを！？」 と玄関のカギがちゃんと掛かってたか確認してた俺。 誰？ってお前しかいないだろ。

「仕事早く終わったら帰って何してるの？」 と聞かれたけど、本読んだりゴロゴロしたりしてるだけで特に言うほどのこともないなぁと思ってこう答えた。 「人に言えるようなことは何もしてないよ！」 一気にあやしげな感じに。

彼女が俺のうちで何かを探すようにキョロキョロしていた。 「何探してるん？ 爪きり？ それとも耳かき？」 「ううん、何か金目のもの」 空き巣狙いかよ。

同じ事務所で働くパートのUさんが、差し入れにケーキを買ってきてくれたので、みんなでおいしくいただいてたんだけど、ふと見るとUさんだけは食べていなかった。 「あれ、Uさん自分のはないの？」 「ううん、私はいいんよ。あんたらだけで勝手に太りんさい」 やな差し入れの仕方だな。

大阪に住んでいた頃、滋賀県出身の友人が地元の秘密について教えてくれた。 「滋賀県ってなあ、敷地のほとんどが琵琶湖やろ。だから、みんな県境の端っこで爪先立ちでカニ歩きしなあかんねん。ときどき京都とか三重にはみ出て怒られたりすんねん」 滋賀すげえ。

風邪引き中の後輩Tくんが、ゴホゴホと咳をしながら辛そうに仕事をしていたので、大丈夫かなと思っていると、おもむろに立ち上がり、事務所の窓を開けてカーテンを閉め、両方のカーテンの裾を結び始めた。開いた窓から吹き込んでくる風でカーテンがふくらんでいる。 あっけにとられた俺たちの方を向いてTくんがひと言。 「ブラジャー！」 帰らせた。

先日入った喫茶店で、隣に座った若いカップルの話し声が聞こえてきた。 「あれ？　かずくんのコーヒーちっちゃいね！」 「いや、エスプレッソじゃけえ、これくらいでいいんで」 「でも少なすぎるよ！　私の少し分けてあげる！」 「う、うん…」 いい彼女だね。