昔働いていたオフィスのすぐそばに、本格的なインド料理店があった。とにかく羊肉のカレーが美味で、私の超お気に入り。週に1度は食べていたように記憶している。 白状すると、この店にはちょっと「辛い」思い出がある。カレーの「からさ」で涙を流したわけではない。インド人の店員に、いつも英語がまったく通じない「つらさ」だ。 「ラムカレー、ください」 「ラムカレー、ください」——。たったそれだけなのに、“ラム”の発音が悪すぎるようで、必ず2度は聞き返される始末。結局しょうがないのでメニューに書かれている番号を指さして、「34番を」と言うしかない。曇った顔が一瞬で晴れて、「らんっぶぅ、くぁーれぃ、ね。おぅけぃ」と、インドなまりで答える店員のドヤ顔を見る度に、私は絶望的な気持ちになった。そして空虚な心を埋めるために、羊肉カレーに毎回がっついた。 あれから11年。残念ながら、怠惰ゆえに私の英語力はそんなに成長し