取材・文:和田拓也 撮影:黒羽政士 銭湯の湯船で一息いれるとき、そこにはいつも、壁一面に描かれた富士の絵がある。 “いい湯だな”には”いい絵だな”が欠かせない。そんな日本のお風呂文化を支えるのが「銭湯絵師」だ。 銭湯絵師は、文字通り銭湯の絵を描く背景絵師(ペンキ絵師)たちのことをいう。現在、その数は銭湯の減少とともに減り、日本には三人が残るのみとなってしまった。 その中の一人が、丸山清人(まるやま きよと)さん。18歳で銭湯絵の世界に入ってから65年、銭湯に訪れる人々を絵で癒し続けてきた、日本最年長の銭湯絵師だ。 そんな丸山さんの絵師生活の中で、昨年はじめての弟子ができた。 弟子入りしたのは勝海麻衣(かつみ まい)さん。日本最高の美術大学である東京藝術大学に在籍する一方で、ファッションモデルとしても活躍するアーティストだ。 友人から「武士」と呼ばれるように、現役藝大生、そしてモデルという肩