静岡には雪が降らない。しかし稀に一片の粉雪が舞う。それを風花という。山頂の積雪が北風にのって、人里まで流れてくるものである。なので雪といえば雪なのだが、はらはらと踊るばかりで、ふれれば消えてしまう。積もることなど毫もない。 静岡で雪を見るのならば、登山でもするしかない。冒頭で静岡に雪は降らないと書いたが、たぶん北の方角に行けば降る。でもそこは長野という県になる。虫を食する夷狄の国。長野県民のみなさんすみません。だから静岡ではなくなる。だから静岡で雪というのはツチノコとか妖精とか、そういうファンタジーの世界のものでしかない。 そんな雪だから。孫に見せたいと思った祖父がいる。私のじいちゃんである。野暮用により雪のある地方にいったじいちゃんは、雪を発泡スチロールいっぱいに詰め込んで静岡まで運搬してきた。高速道路をびゅんびゅんに飛ばして。法に触れるそのスピードで。車内は暖房もつけず、ただ一心に「孫