イラクとシリアに跨るISの支配地域の内情がどの様なものであるのかは多くの謎に包まれている。メディアなどで語られる情報は反IS側の陣営によるプロパガンダ的な要素を含んだ物が多く、その内容のどこまでが真実であるのか釈然としない点も多い。IS側もこれまでジャーナリストを支配地域に入れる事を拒んできた。多くのジャーナリストがIS の戦闘員に拘束され殺されている。本書はそんな状況の中で西側陣営のジャーナリストとして初めてISの指導者であるバクダーディーから正式に許可を得てIS支配地域を取材にしたドイツ人ジャーナリスト、トーデンヘーファーのルポタージュだ。 ジャーナリストとしての著者の立ち位置は明確だ。事が起こった際には、批判的精神を持ちつつ当事者双方の意見に耳を傾けるというものだ。当たり前なように聞こえるがこれは本当に難しい事だろう。日本の事を例にとって考えればわかるだろう。中国や北朝鮮などの国々と