平成という一つの時代が終焉を迎えつつある今、改めて思うのは、この元号がいかに言い得て妙であったかということである。 「国の内外、天地とも平和が達成される」という本来の意味には程遠かったが、たしかに世の中は、平ら(フラット)に成ってきた。売り手と買い手、情報の発信者と受信者、大企業とスタートアップ、中心と周縁、あるいはメインストリームとカウンターカルチャー。 だから、けもの道のような場所でもひたすら歩き続けていれば、突然スポットライトを浴び、メインストリームに躍り出る瞬間がある。しかしそれも長くは続かず、また別のけもの道を探しにいく。HONZの活動など、基本的にこの無限ループなのだが、これがやっていて案外楽しい。 HONZメンバーが、2017年最高の一冊を紹介するこのコーナー。まずは、けもの道を歩きつづけるメンバー達の珠玉の一冊から紹介していきたい。 冬木 糸一 今年最も「人類の可能性に驚か
『世界をつくった6つの革命の物語』(朝日新聞出版)、『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語』(同前)、『ピア PEER』などで知られるスティーヴン・ジョンソン。彼の過去作が10年越しに文庫化された1冊である。 舞台は19世紀のロンドン。劣悪な衛生環境の中で、人びとは繰り返されるコレラの流行に苦しめられていた。本書は中でも集中的な被害をもたらした、1854年晩夏のコレラ禍についてさまざまな角度から検証した1冊だ。 1854年のコレラ禍は、悪臭こそが病気の原因だという「瘴気説」が転覆する契機でもあった。コレラの感染経路を突き止め、当時主流だった瘴気説の誤りを指摘した人物として知られているのが、麻酔医ジョン・スノーである。 ロベルト・コッホによってコレラ菌の存在が広く知れ渡るようになったのは1884年(第一発見者は別の人物)。スノーはその30年前に被害区域の多くの家庭を訪問し、掴んだ感染傾向を死
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