前提、まずは私の母の話。 母は何でもできる人だ。 小学校から名門学校に通い、大学は某国立大学。はっきり聞いたことはないけれど、思い出話を総合するとずっと主席(もしくはそれに近い存在)。 専業主婦をしていたが、家事も料理も完璧にこなす人。 だから多分、「できない人」のことが分からない人だ。 母の教育方針に、「答えを簡単に教えない」というものがあった。 人に聞いて簡単に得た知識はすぐ忘れてしまう。だから、試行錯誤して自分で答えにたどり着くべきだ、と。 これ自体はまあ、その通りだと思う。 だから、母に質問しても突き放される幼少期を過ごしてきた。 例えば、本を読んでいて、知らない単語が出てきたとする。 で、近くにいる母に、「これどういう意味?」と聞く。 すると母は部屋の一角を指さして「そこにあるのは何?」と質問を返す。 母が指さすのは分厚い広辞苑。 これで質問タイムはおしまい。私は一人、重たい広辞