とある小雨降る五月の朝、例によって勤務先の近くの馴染みの喫茶店でお茶を飲むために駅の近くまで行ったら、駅からぞろぞろと通勤客が降りてきました。 すると、その中のサラリーマン風の小太りの若い男が顔をしかめて左手で辺りの空気を払いながら歩いてきました。男の左側には自治体が作った灰皿設置の喫煙所があり、そこで数人の男女が紙巻タバコを吸っていました。 右手で空気を払いのけるそぶりを見せるのは、タバコの煙が嫌だという意思表示でしょう。 朝っぱらから、他人に好んで喧嘩を売る無神経な振る舞いをする奴もいるものだなと思って、すれ違いざまに顔をまじまじと見ると、年の頃は35歳前後でしょうか、メタルフレームの眼鏡をした、いかにも神経質そうな顔つきの男です。全身から不快な人物であるという雰囲気がにじみ出ています。職場でも仲間に嫌われて、浮いている奴でしょう。 すると「何だ、この野郎。文句があるのか!」という怒声