小熊英二『日本社会のしくみ:雇用・教育・福祉の歴史社会学』講談社現代新書, 講談社, 2019. 近年ではジョブ型/メンバーシップ型という概念で説明されるようになってきた日本の雇用制度の形成史である。米独などの雇用慣行との比較もある。新書ながら600頁もあるものの、著者の他の著作に感じることのある「無駄に長い」という印象はなく、コンパクトにまとまっていると言える。 本書は次のような歴史を描く。明治から戦前期にかけて、日本の大企業の雇用者は、上級事務員、下層事務員、現場労働者の三層構造だった。それぞれの学歴は大卒、高卒、中卒に対応したが、諸外国と異なり、学校で学んだ内容は問われなかった。また上級事務員のみ昇給と終身雇用が約束された。こうした三層構造は、政府における官僚組織や軍隊から影響を受けて形成されたと推測されている。 敗戦直後、上級事務員の生活が困窮するに及んで、彼らと現場労働者との同盟