私は相手に「求める」ということをしてこなかった。できなかった。「求める」ということをしていないことにさえ気づいていなかった。 それは家族に対しても、恋人に対しても、親友に対してもそうだった。 相手に「求めなくなった」のはいつからなのか。自分の人生を思い返せば思い返すほど、「求めた」という感情や行為を思い出すことができない。 そこにいる相手がそれなのだから、そんな相手が好きで一緒にいるのだから、そんな相手を好きになったのは私なのだから、という思考が根付いているのだと思う。 基本的になんでも寛容し、許し、終いには「仏」と呼ばれるようになった。 ここで話している「求める」ということは「その人自身を求める」という意味ではなく、「ここを改善してほしい」だとか「(私に)これをしてほしい」とかそのような意味である。 例えば恋人に短所があったとする。普通はそこで「改善してほしい」と求めるのだろうが、私は「