平安時代から鎌倉時代にかけての常識は、理解しがたい。この頃の軍記物や説話集に、常識として書かれていることが、現代の価値観で考えると不思議でならない。そのうちのいくつかを書きだしてみる。 和歌がうまくないと女にモテない。 家柄や富貴も大事だが、女にモテようと思ったならば、和歌がうまくなければならない。しかも、当時の貴族の恋愛は、非常に変わっている。恋愛は、まず和歌による文通からはじめる。やんごとない身分の女性の場合、家の奥に引き篭っているので、顔すら見ることはない。 さて、文通で和歌の才能が認められたならば、男から女の家に忍んで通いに行く。逢瀬は夜。ただでさえ暗い夜中に、光の差し込みにくい日本家屋の奥で逢うのだ。初めてあった時などは、顔などろくにわからなかったに違いない。 あまりに身分が違う男女であると、女を男のほうに呼びつけることもあったようだが、やはり和歌は重要である。たとえば、古今著聞