研究主幹 小林慶一郎 日本の経済実態が好調な一方で、政府の財政が悪化の一途をたどっていることはよく知られている。日本経済に対する信認が失われない限り、財政破綻が10年以内に起きる可能性は小さいが、このまま財政再建をしなければ政府債務は増え続けるので、いつかは必ず財政破綻が起きる。それはやや長期的な将来かもしれない。しかし、我々の老後か、我々の子供たちが中高年になる頃までには起きるだろうという意味で、財政破綻の可能性は、一人ひとりが人生の中で考えておかねばならない事柄である。 財政は破綻しない?――日本を蝕む無謬性のロジック 私は財政破綻が近いと言いたいわけではない。しかし、「最悪の事態を想定することをタブー視して、誰もそれを語らない」という現状は、政策論議のあり方としてきわめて不健全である。最悪の事態を想定しないという日本の政策論争の特徴は、日本の大組織に典型的にみられる「無謬性のロジック