アクリル繊維を炭化した炭素繊維は、日本企業の地道な技術改良で開花した先端素材だ。先頭に立って市場を開拓してきた東レが世界シェアの約4割を握り、2番手の帝人、三菱レイヨンを足した3社で世界生産の6割超を占める。中国などのアジア企業も参入済みだが、日本勢とは品質で大きな差がある。 炭素繊維は通常、樹脂を混ぜた複合材料(炭素繊維強化プラスチック=CFRP)にして使用される。軽くて強く、耐腐食性にも優れ、最新鋭旅客機の胴体・翼をはじめ、風力発電風車の羽根、ゴルフクラブ、ガス圧力容器などに使われている。 そして今、最も熱い分野が自動車だ。世界的な燃費・環境規制などを背景に、各国の自動車メーカーは車体の軽量化を急いでいる。「そのための手段として、自動車構造部材でCFRPの採用が増えていくのは間違いない」(帝人炭素繊維・複合材料事業本部長の中石昭夫氏)。 これまで自動車業界ではコストの問題からCFRPの