まさか“Requiem Dub”を聴けるとは思いも寄らなかった。もしもフランクフルト学派がこの日のこだま和文のライヴを見ていたら、泣いて喜んだことだろう。20世紀前半のもっとも重要な文化研究グループとされる彼らは、アートがこの資本主義社会で果たす役割があるとすれば、それは「耐え難いこの世界を告発することだ」とした。「偉大なる拒絶」の一部になること。2024年8月24日の21時、渋谷のWWWで、いまだにそれをやっているひとがいた。 ぼくはフランクフルト学派ではないが、泣いた。同じように、たぶんフランクフルト学派ではないマヒトゥ・ザ・ピーポーも「泣いた」と言って、ライヴ終了後に楽屋でこだまさんをハグしていた。ほかにも、多くのひとが泣いたに違いない。ひょっとしたらその涙は、こだまさんが自分の詩を朗読しながら訴えたパレスチナの現実および自分たちが生きているこの悲しい世界に対する憤りの涙で、と同時に