グラスを傾けつつ嗜みたい、酒香るエッセイにして、ヒトとヒトサラ流のカルチャー・ガイド。ミュージシャンや小説家、BARの店主や映画人。街の粋人たちに「読むヒトサラ」をお願いしました。 ウエストコースト・ジャズを代表するトランペッターにしてシンガーのチェット・ベイカー。彼のことを初めて知ったのはラジオだった。1981年の冬に聴いたNHK-FMのサウンド・ストリート。DJは佐野元春さんで僕は13歳だったと思う。小さなラジカセのスピーカーから流れてきた「That Old Feeling」。その柔らかな歌声とノスタルジックな響きに心奪われた僕は、エアチェック(当時ラジオを録音することをそう呼んでいました。)したカセットを何度も聴き返しては夢心地に、そして少しだけ大人になったような気持ちにさせられたものだった。 僕は幼いときからノスタルジックな感情に浸るのが大好きだった。小学生のときには幼稚園時代を懐
グラスを傾けつつ嗜みたい、酒香るエッセイにして、ヒトとヒトサラ流のカルチャー・ガイド。ミュージシャンや小説家、BARの店主や映画人。街の粋人たちに「読むヒトサラ」をお願いしました。 「広島にビール飲みに行こうよ」 嶋さんから突然こう言われて「行きます」と即答したのは去年の終わり頃だったはず。そもそもおれは嶋さんの誘いを断ったことはないけど、新幹線で飲むビールはうまいし、お好み焼きとビールも合うだろうし、ビール好きとして乗らない理由がない気がしたのだった。 嶋さんはおれより3つ年上の気のいいおっちゃんで、何年か前に知り合って年に1、2回いっしょに飲んでいる。お互いに毎日忙しくしてるので、たまに飲むのはだいぶ楽しい。この歳になると、仕事関係なく飲める相手が貴重になってく感じもあるし、あと東京にいると取材とか会議とかなんだかんだ予定が入ってしまうってのもあって、仕事を忘れて広島まで行くっていう話
輸入レコードのお店を20年も続けていると、世界のいろんな街に知り合いができる。メール(昔はFAX)だけのつき合いもあれば、買いつけに行った先で知り合い、その後も長いつき合いになる友人もいる。中でもイギリスのブリストルには、日本に暮らす誰よりも頻繁に会ったりやり取りする友人たちが、数多く暮らしている。 ブリストルは、ロンドンから急行で2時間弱のところにある、小さな都市。アフリカやジャマイカ、インドやパキスタン、ポーランドにアイルランドなど、世界のいろんな地域の人々が移り住んできた歴史がある港町で、その影響から、音楽を始め豊かな文化が育まれてきた。いわゆる「ブリストル・サウンド」と呼ばれる、レゲエ~ダブ、ヒップホップの影響を受けた、ダウナーでメランコリックな音楽が生まれてきた街として知られるいっぽう、ザ・ポップ・グループやカオスUKといったパンク・バンドが数多く生まれた街でもある。そして、スト
グラスを傾けつつ嗜みたい、酒香るエッセイにして、ヒトとヒトサラ流のカルチャー・ガイド。ミュージシャンや小説家、BARの店主や映画人。街の粋人たちに「読むヒトサラ」をお願いしました。 いままで気付かなかったことに、とつぜん気付くことがある。人生の深淵、とかではなくて、これから話すのはもっと他愛ない話だ。 ザ・ビートルズの、というよりポール・マッカートニーの作った「イエスタデイ」という歌。この歌の歌い出しのメロディ、冒頭の部分だけポールはイエスタデイ、という言葉をおなじみの「レ・ド・ドー」ではなく、ためらいがちに「ド・ド・ド」、と歌っている。 まるで大発見のようにこのことを話しても、たいていの人はそれがどうしたの、という顔をする。あるいは、そう? 私にはやっぱり「レ・ド・ドー」って歌ってるように聴こえる、と言われたり。 けれども、自分にとってこの発見はやはり大きかった。いままでザ・ビートルズの
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