料理を学んでいると、しばしばテイスト(taste)とフレイヴァー(flavour)の違いについて考えさせられる。 テイストはいわゆる味。舌で感じるもの。 フレイヴァーは味わい、風味。味や香りや食感が渾然一体となった感覚。 SNSでバズり、勝手に流れてくるような料理はテイストに寄ったものが多いと感じる。今は簡単に旨味を重ね合わせていくことができる。「……そりゃ確かに美味しいでしょうよ」という組み合わせ。 岩村暢子さんの『残念和食にもワケがある』によると、煮物は少しずつ食べられなくなり、代わりに温野菜の勢力が拡大しているそうだ。素朴で均一的に味付けられたものは避けられて、温野菜を各自がお気に入りのドレッシングをかけて食べる。 美味しすぎるドレッシングをかけてサラダを食べると、野菜の素材自体が持つ「風味を味わっている」のではなく、「ドレッシングを食べている」ような感覚に陥る。野菜はドレッシングを