前田隆弘『死なれちゃったあとで』(中央公論新社,2024,kindle)。今朝方、Kindle化していたのを知って購入して読んだ。 良い本だった。冒頭に〝実際に経験した死別について書きました。〟とページの真ん中に明確に書かれた一行が置かれてあり、凄みを感じた。 描かれたどの死にも、何かのタイミングや行動で生死の結果が違ったのではないかという〈もしかしたら〉が張り付いている。作中エピソードにある、葬儀のあとに撮った集合写真の顛末のように、生き/死にのあいだにある、半角スラッシュほどの薄い膜。〈 / 〉。 表紙の絵が美しい。 同人誌版は、発売されたのを知りつつ日々の暮らしに忙しく疲れているうちに、気づいたときにはもう入手できなかった。同人誌版から加筆(ある一編の「その後」がある)、さらに新作が書き下ろしされているが、三編が同人誌版にしか収録されていないらしいのだ。 しかし、同人誌版には収録され