【食欲(1)】 仏教で教えられる『十悪』のうち、心で造る罪悪が三つあり、 その筆頭が『貪欲』です。 欲しい、欲しいと求める心のことです。 貪欲の中でも代表的な五つを『五欲』といい、 その最初に挙げられるのが『食欲』です。 「食欲」を罪悪だと説かれる釈迦の教えに、 「食欲がなぜ悪なんだ?」と首をかしげる人も多いと思います。 「食欲の秋」と聞いて「悪を造る秋」と思う人もありませんし、 「私、お腹空いちゃった」と発言する人に「なんて悪いことを口にするんだ」と眉をひそめる人もありません。 「食欲が旺盛なのは健康的でいいことであり、咎められることではなかろう、何が悪いことあるか」と言っています。 しかしそれは類いまれな飽食な時代に私たちが生きているから、そんなことが言っておれるのです。 人類史は何千年も前から「飢饉」を最悪の敵としていました。 つい100~200年前には世界のほとんどの人が、 生物学