大英雄が無職で何が悪い 第0話 それはよくある目覚めの風景 〝──目覚めよ。〟 「……あ?」 誰かの声が聞こえたような気がして、俺は目を開けた。暗い。 まだ夜なのか。 でも、真っ暗ってわけじゃない。灯りがある。蝋燭、なのか? どうやら、そうらしい。 蝋燭が壁に据えつけてあって、それがずっと列をなして、向こうのほうにまで続いている。 俺は、頭を振る。何だ、ここ? 寝てたのか、俺? こんなとこで? 変じゃないか? だって、ここ……洞窟? みたいだぞ? でも、洞窟に蝋燭なんて、あるか? 「うぁ……」 という声が聞こえて、それはもちろん、俺の声じゃなくて、どうも女の声らしかった。 俺は、あたりを見まわして、探す。 いる。 そんなに遠くじゃない。暗い中にも、女らしい輪郭が……一人じゃ、ない? 「誰か、いるのか? つーか、いるよな」 と呼びかけて、少ししてから、 「……い